Pucelleダイヤリー
オタ話全開と親バカ日記 たまにSSも載せてみたり
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始めてなので勝手がいまいち掴めなかったかも^^;
しかし初っ端から前後編www
まぁ付き合ってやろうというお優しいお方は畳んだ先に宇宙は広がってます!
では^^
地球より遥か14万8千光年彼方にあるイスカンダル星へ。
人類滅亡に瀕している地球を救う旅を続ける宇宙戦艦ヤマトには幾つかの名物がある。
恐れ知らず、勇猛果敢な戦闘機乗り集団のブラックタイガー隊。
かつて大海原を未知の大陸を求め冒険をした、マゼランやコロンブスにも負けない熱き血潮を胸に、宇宙の道なき道を突き進む航海班。
何よりも得意なのは、ヤマト女性クルーのスカートめくりかヒップタッチの分析ロボット・アナライザー
そして生活班班長、森雪の淹れる、何とも不味いコーヒー。
勇者のコーヒー(前篇)
ヤマトの中腹付近にある談話ルームでは、島大介航海長を始めとした航海班数名が、つかの間の休憩を味わっていた。
銀河系を離脱し、ひと月近くも閉じ込められた宇宙嵐からも脱出できたのは48時間前のこと。
地球とイスカンダルの中間地点にある筈のバラン星も確認できたことから、彼らの周りには穏やかな空気が流れていた。
「それにしても、休憩時間の飲み物がミネラルウォーターだってのも飽きたよな」
談話室に備え付けられている給水器から注がれた水を口にしながら苦笑したのは、島の副官でもある太田である。
ヤマト館内でも大食漢で有名な彼にとっては、朝食のフレッシュジュースか夕食時に許されているお茶類に約小ビール瓶1本相当のアルコールの他、ミネラルウォーターしかないという現実は少々酷なようであった。
そんな太田の冗談とも本気ともつかない苦笑とため息を慰めるのは、航海班班長たる島大介であった。
「そう言うなよ、太田。イスカンダルに向けての航路だって、まだ半分も進んでないんだ。これから先にどんな事態が待ち構えているのか予測がつかない以上、生活班としても食料の備蓄には万全を備えざるを得ないだろう。水だって貴重な水分なんだぜ」
「それを言われちゃ敵わないなぁ。ま、ここは我らが班長たる島の意見を尊重するか」
頭をかきつつグラスの中のミネラルウォーターを飲みほし、「ああ、美味い!」と舌鼓を打てば、共に休憩をしている航海班のテーブルから笑い声が起こった。どの声も明るく浮かれ気味の笑いである。
実際、彼らは浮かれ気味であった。
何といってもバラン星という名の惑星が、はっきりと航路の先にあると観測ができたのだから。
地球からイスカンダルへ向かう旅において、ちょうど中間にあるこの惑星は目印とも灯台ともなる。
大ワープにより銀河系を抜けたヤマト航海班にとって、この惑星の存在をいの一番にとらえるのが何よりの急務とされていた。
バラン星の存在は、イスカンダル女王のスターシャが送ってきたカプセルに込められていた航路のデータの中で初めて地球に存在を明らかにした星であり、近くに恒星をもたない惑星は、地球からの観測は不可能であった。
大マゼラン星雲への途中の外宇宙にあるとされるバラン星。
それが本当に存在するのかという問題は、のままイスカンダルという星が本当に存在し、放射能除去装置コスモクリーナーDを譲り受ける事ができるのかに直結する重要なポイントでもあるのだ。
その星を第二艦橋に設置されている空間望遠鏡で目視できたのと同時に、バラン星から発せられていると思われる電波や、付近に漂うガスの成分が恒星の残骸であると確認でき、慎重に慎重を重ねる作業の後に、度の灯台星の確定に繋がったのだ。
航路が数センチずれただけでも取り返しのつかない迷子になりかねなかった、無限に広がり広大な宇宙の中。特に10代後半や20代前半の若者で占められている航海班が、重大な任務を一つ成し遂げたのだから、ここは浮かれるなと言う方が無理である。
そんな気分は当然ながら先ほど太田を諌めた筈の島も例外ではないのであった。
おどけた太田に笑った後に、島も手にしたグラスの中の水を飲み干すと、ともにテーブルについている仲間達の顔を見渡し、18歳の少年らしい悪戯めいた顔で口を開いた。
「それに水だっていいもんじゃないか。生活班班長の森君が淹れてくれるコーヒーに比べれば」
このひと言は仲間達の爆笑を誘った。
「ああ! 森君のコーヒーか! あれだったら無味の水だって甘露の水だよ!」
「森君もなぁ、あんなに可愛いのにコーヒーやら料理の方はからっきしらしいじゃないか」
「天は二物を与えないというが、本当だな」
本人がいないのをいい事に言いたい放題であった。
もっとも、彼らは生活班班長である森雪にだって直接同じ事を言っては、剝れる雪をからかい遊んでいるのだから、同じだ。
それに島達のいう事は真実でもあるので、雪としては反論できないのでもある。
先の長い旅の為に食料などの備蓄に心を砕いているのは事実だが、緊張の連続の航海でもある。
クルー達に憩いのひと時を送ってもらいたいと、各班の休憩状況を細かく把握し、コーヒーを入れて配るのは、雪が沖田艦長に提案し許可を得たものであった。
この制度はヤマトクルーに評判だった。 雪の淹れたコーヒーを除いては。
同じ生活班である他女性クルーが淹れるコーヒーは可も不可もない味なのに、何故か雪はどうしても美味しくならない。
特別に難しい豆を使ってはいない。器具もごく普通の一般的な業務用コーヒーメーカーだ。
しかし耐えられない苦味があったり、焦げくさかったりと、どうお世辞でくるんだとしても不味いコーヒーとしか表現しようがないのだ。
今日のコーヒーが生活班班長作になるのかどううか。
これは班を超えたヤマトクルーにとって、一種のその日の運勢占いにまで発展しているのであった。
「おいおい、ひどいじゃないか諸君。森君だって地球に帰るまでには上達するかもしれないだろ?」
大げさに眉をひそめるのは太田だが、それでもわざとらしく大げさな口調から本気で雪が上達するなど思ってもいないのは明白である。
そういえば第二艦橋においてバラン星の発見に全力を傾けていた島や太田の元に、雪自身が淹れたコーヒーを持ってきた。
『それにしても、いつ飲んでも森君の淹れたコーヒーは美味くならないなぁ』
とからかい気味に声をかけた島に、雪はいつもの通りに剝れてみせたのだった。
その時に「いやいや、このコーヒーの美味さを分らない島は、まだまだだな。俺なんて森君に結婚を申し込みたいくらいだよ」と太田が軽口を叩いたのも記憶に新しい。
それからどうしたのだったか。
『あら嬉しい。 ほら御覧なさいな、島君。分る人は分るのよ。 太田さん、もう一杯いかが?』
澄まして笑った雪が太田にお代りを促すと、太田は慌てて断ったのだった。そして雪はまた剝れた。
その時の経緯を思い出した航海班クルーが声をそろえて笑う。
「やっぱり、森君のコーヒーを美味そうに飲めるヤツはヤマトにはいないな」
という結論を持って。
そんな時だった。
談話ルームの自動ドアが開く音がして、がやがやと賑やかな集団がやってきた。
先ほどまでヤマト周辺の宇宙空間で模擬戦闘訓練を行っていた、戦闘飛行隊ブラックタイガーであった。
彼らもまた浮かれ気味であった。
その理由は航海班の浮かれ理由であるバラン星発見によるものではなく、長らく閉じ込められていた宇宙嵐を抜け出した事によるものである。
ひと月近くもの宇宙嵐に足止めを余儀なくされていたヤマト艦内に、当然クルーは閉じめられる形となった。彼らにとってそれはフラストレーションが溜まる苦行意外の何者でもない。
元々身体を動かしてなんぼの世界の戦闘班である。中でも戦闘機パイロット集団のブラックタイガーはエースである加藤三郎を先頭に気が荒い。
そして中でも戦闘班を束ねる班長の古代進のストレスは最たるものであった。
親友である島と、とっくみあい殴り合いのケンカをした事も一度や二度ではない。
そんな戦闘班も嵐を抜け、いつもと同じ訓練メニューをこなせるようになり、ブラックタイガー隊も訓練ではあっても宇宙空間を操縦かんを操り飛べる。
その解放感もあって談話室にブラックタイガー隊と共にやってきた古代も上機嫌だ。
「よっ! 島、お前も休憩か?」
真っ先に島を見つけた古代が軽く右手を上げながら声をかけてきた。
「ああ、ブラックタイガーも張り切っていたようだな」
「まぁね。そういや島、さっき真田さんから連絡をもらったんだけどバラン星を見つけたんだって?」
会話を続けながらも、古代は給水器にグラスを置いてスイッチを入れた。
「ああ、ばっちり最終確認もできた。艦長にも報告もすませた。36時間後にはバラン星に向けてワープに入るぞ」
「やったな! おい! 加藤、山本! 航海班がバラン星を見つけたのは本当だってよ!」
灯台星を確認できたのを喜ぶのは航海班だけではない。同じ目的を持つヤマトクルーならば誰にとっても吉報なのだ。
古代が島の肩を友情を込めて叩き、そばの椅子に腰かけると、少し離れたテーブルを占めていたブラックタイガー隊もそろって航海班のいるテーブルへと近寄ってきた。
「やったじゃないか、航海班!」
「さすがヤマトの航海班は一流そろいだな」
口ぐちに朗を労い、任務の達成を喜ぶパイロット達に島や太田もまんざらでもない様子である。
「それじゃ、バラン星発見を祝して乾杯だ!」
古代が水の入ったグラスを上に掲げれば。
「おお! 航海班クルーを讃えるか!」
「水じゃカッコつかないけどな、気持ちだ、気持ち!」
加藤や山本も同調する。他、パイロット達も同じくグラスを持ちあげ「乾杯!」という古代の掛け声とともに美味しそうに水を飲み干した。
* * * * *
簡単な乾杯のあと、しばらく雑談していた島以下航海班と古代以下ブラックタイガー隊であったが、ふと話題が休憩タイムのコーヒーにわたったきっかけは何だったのか。
それは後から考えても誰も思いつくものはいなかった。
しかし、いい事があればその反対もあり。
一躍ヤマト内の英雄になった島達だから、今日の運勢コーヒーは島や太田にくるのではないか、それこそが等価交換だと言い出したのは、山本だったかもしれない。
この際誰がどうだなどというのはどうでもいい。
とにかく森雪のよる「運勢コーヒー」の単語が飛び出したとたん、航海班クルーの間に流れたのは失笑だった。
何事か、と訝しげな古代に説明をしたのは島だった。
「さっきもさ、俺たちの間で話題になったんだよ、森君のコーヒーが。古代も勘弁して欲しいだろ?」
「なんだ、そういう事か」
島の説明に反応をしたのは、どちらかといえば加藤や山本たちブラックタイガー隊だった。
彼らもまた、「運勢コーヒー」のババを引き当てた経験がある口なのだ。
「ああ、確かにな」だの「何よりも後味の悪さがなぁ」ち口ぐちに雪が不機嫌になるであろう単語を頻発し始めた。(彼らが少年に近い若年だという事で、お許し願いたい)
だが、その中で一人だけ違う反応を示した者がいた。
「そうか? 俺はまんざら嫌いじゃないぜ? 森君のコーヒーは」
ヤマトクルー内でも短気さにおいてトップクラスを誇る、戦闘班班長古代進その人であった。
「森君のコーヒーはさ、そりゃお世辞にも美味いとは言えないけどさ、一応はコーヒーの味はしてるわけだろ?」
それでいいじゃないか。というのが古代による森雪のコーヒー評の全てであった。
「しかしなぁ、味ってのも重要じゃないか?」
これに突っかかったのが島であった。島は実はコーヒー好きであり、彼の地球帰還後の夢といえば、家族との再会もそうだが、他にも本格的なコーヒーをじっくりと味わう事がある位だ。
だから古代による、コーヒーの味がすればそれでいいというのは、どうにも受け入れがたいものがある。
しかし島の反論も意に介しない古代は、ゆったりと椅子に背中を預け、足を組むと、上から目線で島を笑った。
シュンッと小さな音を立てて自動ドアが開く。
戦闘中に神経を集中している古代ならば、いかなる音も聞き逃さないが、今は休憩中だ。
すっかりくつろいでいたのに加え、ドアに背を向けて座っていたために、新たに一名のヤマトクルーが入室してきた事に全く気付いてはいなかった。