Pucelleダイヤリー
オタ話全開と親バカ日記 たまにSSも載せてみたり
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
前篇UPしてからどんだけ経ってんだって話しですよね^^;
それでは後篇です
無駄に長いですけど(前篇の1.5倍……かな?)
気が向かれた方、どぞ
「分ってないなぁ、島は。いいかい? ヤマトの航海はどうなるのかまだまだ未知数だ。しかも宇宙現象とはいえ、予定外に宇宙嵐に足止めを食ったじゃないか。ヤマトの食糧備蓄はどれだけあっても足らない位に違いない」
入室してきた人物に目を走らせた加藤が、面白そうに瞳を輝かせ、両隣に建つ山本や田中に合図を送った。送られた山本と田中は加藤が無言で指す方向を見て、噴き出しそうになるのをこらえる。
「したがって、毎回の食事がいっつも同じメニューだってのも、我々は耐えなくちゃならないだろ?」
次に気がついたのは太田他航海班クルーであった。
太田は加藤や山本と違い、面白がるのではなく非常にまずい顔をして、古代に目線で牽制を始めた。
加藤も山本も普段はパイロット控室にいるのが常だ。でなければ格納庫でブラックタイガー機の整備等にいそしんでいる。
しかし、太田は古代と同じ第一艦橋勤務である。島も同じであり、ついでに言えば新たにやってきたクルーもそうだ。 いらない波風は立てたくないのが本音なのだ。
「つまりは、俺達は変化のない食事に文句を言う事は許されない、可愛そうな立場なんだよ」
最後に気づいたのは島だった。
島は古代の右後方に立った人物に愛想笑いを浮かべると、現状を親友に伝えるべく、こっそり組まれた古代の足を蹴った。しかし、すっかり図に乗った古代が気に留める事などない。
「そんな毎日おんなじメニュー攻撃にあっている俺達にとって、森君のコーヒーは唯一、同じ味などない変化に富んだものじゃないか」
「おい、古代。そろそろやめとけ……古代!」
小声で注意を喚起しても聞く気配すらない。
「あの、今日は濃すぎて苦味の極みだと思えば、次の日はカップの底の文字も読めるんじゃないかっていう薄さ。砂糖とクリームを頼めば、虫も裸足で逃げ出す甘ったるさ。かと思えばそこまでケチる事ないだろうと文句をつけたくなる、しょぼさ。どれ一つをとっても刺激的だろ」
「おい、古代。やばいって、古代!」
「それにあのコーヒーがあるからこそ、味もそっけもないミネラルウォーターの美味しさだって身にしみて感じるってもんだぜ……いって! 何をするんだ! 島!」
あたりの沈黙に気づきもせずに調子にのる古代の口を止めたのは、とうとう思い切り島に蹴りを入れられたからであった。
不満げに島を睨む古代であったが、島本人はそんな事に構ってなどいられなかった。
グラスを口に運びながら、はっきりと古代の耳だけでなく周囲にまで聞こえるように、情報を伝えた。
「右舷後方5時の方向だ。マゼラニックストリームが渦巻いてるぞ」
「マゼラニックストリーム? バカを言うなよ、そんな宇宙現象が艦内に発生するわけないだろ」
マゼラニックストリームとは、大マゼラン星雲付近に広がる中性水素ガスである。
大マゼラン星雲から銀河系へ尾を引くように吹き上げるガスの長さは、銀河系の直系と同じといわれ、その正体は水素ガスとはいえ、このストリームに捕まれば最後、ヤマトが搭載している波動エンジンが機能しなくなる。
それは万が一敵の襲撃を受けても波動砲が使えないだけではない、航行すら覚束なくなるという意味を持つ、沖田艦長以下、航海班がもっとも警戒しているやっかいな宇宙現象なのだ。
古代としては、それが艦内に発生しているなど、島もいくらバラン星を発見したからとはいえ、ジョークとして笑えないぞ、と考えながら忠告通りに右斜め後ろを振り向いた。
そして島のいう厄介なガスの正体を目にし、不覚ながら一瞬、身体が固まった。
古代の後ろには、両腕を腰にあて、壮絶なまでに愛らしく可愛らしい笑顔を浮かべた生活班班長、森雪その人が立っていたのだった。
「や、やぁ。森君……休憩のコーヒーを持ってきてくれたのかい? サンキュウ」
一瞬固まったものの、すぐに形成を立てなおすべく笑顔を作ったのは、さすがは戦闘班班長である。
「ええ、島君達だけでなく、古代君達も談話ルームにいるって真田さんに教えて頂いたから、コーヒーサービスに来たわ。変化のない可愛そうな古代君を元気付けるためにね!」
にっこりとほほ笑むその表情は、ヤマトのマドンナと言われるにふさわしい可憐さがあるが、言葉と口調は古代に対する喧嘩腰がにじみ出ており、談話ルーム内のクルー達が内心十字を切った。
「なんだよ、その言い方。俺は君のコーヒーを褒めたんじゃないか」
売られた喧嘩は買うのが古代進だ。それはこのところ気になっている少女であろうと例外ではない。
そしてヤマトのマドンナ。生活班班長の少女もまた、血気盛んな戦闘班班長の不機嫌な口調に怯むようなお嬢様でもないのだった。
「まぁ、あれて褒めて頂けたですって!? それは光栄だわ。どうせ、私のコーヒーは同じ味にできないしょぼいコーヒーよ!」
「しょぼいコーヒーなんて言ってないだろ!? たまに砂糖とクリームをケチるって言ったんだ!」
「同じ事じゃないの! そうね、古代君は私の淹れたコーヒーが実に刺激的でお好きなようですから? 遠慮はしないでたくさん飲んでちょうだいな。なんならこのポットのコーヒー全部でもいいわ。他の人達の分は持ってきてもらうから。」
どうせ飲めないでしょ? と上から目線で決めつけられれば、内心ぐっと言葉に詰まっていた古代も後には引けない。
腕を組んで立ちふさがる雪に、古代も椅子から立ち上がると、こちらは両手を腰にあてて少女を見下ろした。
「ああ、そういう事なら飲ませてもらうさ。」
「無理しなくてもよろしくてよ? 途中でギブアップなんて、戦闘班班長さんの面もく丸つぶれですものね?」
「誰がギブアップなんてするかよ! 森君の方こそ自信がないなら、謝るのは今のうちだぜ?」
「まぁ! なんですって!? 誰が謝るものですか!」
今や周りの航海班やブラックタイガー隊のパイロット達など、存在しないかのように二人のバトルは白熱し始めてきた。
島にすれば古代が雪の事が気になっているのは承知済みだし、その意味では自分とライバルだと認識している。だから親友が肝心の雪本人に喧嘩を吹っ掛けている姿に呆れていた。
「よしっ! そこまで君が意地を張るなら、たった今から俺は森君の淹れてくれたコーヒーしか飲まないって宣言する」
散々言い合っていた口喧嘩に終止符を打ったのは、古代の方であった。
まっすぐに少女を見下ろし睨みつけながらいきなり宣言をしたのだ。
それに慌てたのは雪ではなく、島や太田の方であった。
「おい、古代……」
毎日あのコーヒーしか飲まないって、シャレになってないぞ。
自分に背中を向けて立っている親友に島が遠慮がちに声をかけても、古代は聞こえないふりを通すつもりらしい。もっともこの男は一度言い出した事をそう簡単には取りやめなどしない事は、宇宙戦士訓練学校で共に学んでいた頃から知りすぎるほど知っている。
「まぁ、結構ですこと! なら私も古代君へのコーヒーしか淹れないわ! そして地球に帰るまでに、絶対に美味しいって言わせてみせるんだから!」
どうやら後に引かない性格は雪も同じらしい。
考えてみれば18歳の若年でありながら、命の保障はどこにもないイスカンダルへの旅を志願し、人材不足とはいえ生活班班長の任命まで受けている少女なのだ。見かけの可憐さに騙されると痛い目にあう。
「それは楽しみだな。とうとう地球に帰りついても美味くならなかったら、降参を認めろよ」
「ええ、いいわ。なら古代君こそ、美味しいって感じたらすぐに降参してもらうわよ。 美味しいって思ってもまずいなんて嘘をついたら許しませんからね」
「嘘なんて吐くか! ヤマト戦闘班班長の名誉にかけて約束するさ!」
古代は腕を組み、雪は腰に手をあてて。
両者睨みあいながらも、不敵に笑いあうその周りには、確実に波動エンジンさえ止めてしまうストリームが渦巻いていた。
「なぁ、航海長さんよ」
そんな二人を呆れつつ眺めている島に声をかけてきたのは、ブラックタイガー隊のリーダーである加藤であった。
いつのまにか島が座る椅子の後ろに立つと、おかしそうに古代と雪を親指で指している。
「俺達のチーフと生活班のチーフさんだけどな? 本人達は喧嘩をしているつもりだろうけど、俺達にはいちゃついてるようにしか見えないのは何故だろうな?」
確かに、これまでの経緯を知っている島達にすれば、古代と雪が決して仲良くコーヒーの話しをしているのではないと分る。
しかしそれはそれとして、加藤の言うとおりにどことなく二人が親密そうに見えるのもまた、事実で。
そしてそれは島としては、はなはだ面白くはなかった。
「何を言ってるんだ、加藤は」
ふんっと鼻を鳴らしそうな勢いなのは自覚済みで、グラスに残ったミネラルウォーターを最後まで一気に飲み干した。
「あれはどう見たって意地のぶつけ合いじゃないか。あんなのがいちゃついてる訳がない!」
そう言い放ち、苛立ちまぎれにテーブルにグラスを音をたてておくと、エースパイロットは島の真意などお見通しだとばかりに片眉を上げ、笑ってきた。
この時以降、宣言通り雪は古代が飲むコーヒーしか淹れなかったし、古代も雪からのコーヒー以外は口にしなかった。
他ヤマトクルーにとっては「占いコーヒー」を飲まずに済み御の字ではあったが、古代しか飲めないコーヒーとなると興味が湧いてくるというのも、人間の性ではある。
この時の騒動のネタにされたマゼラニックストリームの呪いなのか、間もなくヤマトが本物のマゼラニックストリームに捕まり、その時の衝撃で次元のはざまに落ちるという大きな危機を、イスカンダルの女王であるスターシャに救われる事になる近い未来を、まだ誰も知らない。
そしてバラン星やドメル艦隊との激戦の後に、古代は艦長代理を任命される事になる。
イスカンダル星まで目前となったある日の格納庫での事である。
ブラックタイガー機や愛機であるコスモ・ゼロの整備の為に格納庫に仲間達と詰めていた古代の許にコーヒーが届けられた。
ブラックタイガー隊員とは別のポットに入ったコーヒーは、言わずと知れた雪のコーヒーである。いたって普通に飲む古代に、好奇心に負けた加藤と山本が頼み込んで一口飲ませてもらい……噴き出した。
相変わらずな森雪のコーヒーを、平然と飲む艦長代理は勇者だ。
主にブラックタイガー隊や戦闘班の間で囁かれていた噂が、ヤマト艦内を一巡する頃には、雪の淹れる「占いコーヒー」は『勇者のコーヒー』へと格上げされていた。
これより死闘を繰り返し、イスカンダルへ到着したヤマトが放射能除去装置コスモクリーナーDを受取り、再び赤茶けた地球へ帰還するまでの間に。
雪の淹れたコーヒーに古代が降参したのか。はたまた雪が白旗を上げたのか。
それは古代進と森雪。そしてヤマトだけが知っている。
ま、その……
実は加藤君に「俺たちのチーフ」と言って欲しかったSSなのでした^^;
私の一番好きなキャラは加藤君だから!(弟の四郎くんじゃないのよ、お兄さんの三郎君なの)
ヤマトがイスカンダルに向けて銀河系を脱したばかりの時期、まだ古代君は雪ちゃんを「森君」と呼んでますww
館長代理になった時は、当然「ユキ」ですけどね^^
注)作中の宇宙嵐はヤマト制作班によるフィクションだそうですが、マゼラニックストリームは実在する宇宙現象です^^