Pucelleダイヤリー
オタ話全開と親バカ日記 たまにSSも載せてみたり
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
本編で森川君は堂上に何をささやいたのか、の答えです^^
あっと驚くものでも、変わり映えのあるものでもなくてスミマセン
ちなみにこの続きはないですから!
これがホントのホントのエンドロールだ!!
タイトルはやっぱり「素直じゃない君へ ~補足~」にしました。
だって、ホントに補足だから(笑)
素直じゃない君へ ~補足~
シャワーを浴び、濡れた髪をタオルで乱雑に拭きながら冷蔵庫を明ける。
中にはよく冷えたビールが2本。
もしも小牧辺りが顔を覗かせるならば、2本だけでは心もとない。が、彼は今頃はまだ昇任祝いの二次会にいるはずである。でなければ3次会に突入したか。
玄田が参加している特殊部隊の飲み会なら、朝日が昇るまで解放されはしない。
小牧の事だから、何だかんだ要領よく抜け出す算段はあるだろうし、その時は手塚も一緒に連れ出してくれるだろう。そして帰寮すれば確実に堂上の部屋をノックするに違いない。
二次会を抜け出した経緯からして、結末を小牧は知りたがる筈だから。
そう考えると、どっと脱力感を覚えるが、どっちみち明日は夜勤勤務だ。それに備えて今夜は可能な限り起きている方がいい。
小牧が来たらその時だ、と堂上は腹をくくると冷蔵庫からビールを取りだし、プルトップを威勢よく引き揚げた。
プシュッと小気味いい音をたてて、ビールの飲み口が開かれる。
ビール完にまとわりつく冷気が小さなしずくと変化していくのを手のひらに感じながら、立ったまま一気に半分近くを飲み干した。
あいつ、今日は寝たのか。
一息つきビール缶を机の上に置き、ベットに無造作に横たわると脳裏に浮かぶのは、独身寮の玄関で分れた時の郁だ。
うっかり成分がほとんどの郁である。多少なりとも体内に入れたアルコールの作用が今頃効いてきて、明日が夜勤だろうが夢の世界に突入している可能性は低くはない。
そう考えただけで、眉間に皺が寄ってくるけれど、郁とて特殊部隊員として二年が経過している。
階級も一士から士長に昇任しているのだ、夜勤だって何度も経験しているのだから、彼女なりのペースがきちんと出来あがってるいる筈だ。
思いなおした堂上が、自室の天井を見ながら出てくるのは、無意識のため息だった。
立川の第二図書館から武蔵境の関東図書基地独身寮まで、駅前で拾ったタクシーで帰ってきた。
その時の郁は多少顔は赤らんではいたが、意識ははっきりしており口調も足取りも確かであった。
それでも。
独身寮の玄関に到着した郁が、染まった頬を見せながら「あの、今日は有難うございました。お休みなさい、堂上教官」と頭を下げ、ほんの少しの笑みを浮かべ女子寮の方へ足を踏み出したその時。
堂上は無意識に郁の腕を掴みそうになった。
一瞬の足取りが危うかったように見えたのか、それとも彼女の表情が堂上の何かを捉えたのか。
それは分らない。
しかし、己の腕が動き出す寸前で我に帰らなければ、確実に堂上は郁の腕をとり引きとめていたに違いなかった。
引きとめてどうするつもりだったんだ、俺は?
上官としてあいつがきちんと部屋に戻るのを見届けたかったからか?
まさか、子供じゃあるまいし。
寝オチをしているわけでもない郁を部屋まで送り届けるなど、寮監が許可するわけがない。過保護な上官としての務めも激しく逸脱した行為だ。
例え恋人だとしても、そこまでは……
いや、俺は別にあいつの迂闊が気になるだけで、完全なる安全圏のあいつの部屋にたどりつくまでの、例え数メートルでも自分の目が届かない場所にいて欲しくはないなど、考えてはいない。
ましてあのまま離れがたかったなど、あいつとの関係を変えたいなど……考えるわけがない!
俺が望んでいるのは、自分が笠原が追いかけてくるにふさわしい上官でいる事だ。
凛とした背中に目には涙をため、足手まといにはなりたくないと訴えてくる、自慢の部下が目指すにふさわしい俺自身でいたいだけだ。
だが、胸の奥底に抱えた箱の蓋がきしむ音から意識をそらす一方で、第二図書館で分れた友人が最後に囁いた言葉がよみがえり、知らずに握った拳に力が入る。
『素直になりどきが肝心だぜ? 意地ばっかり張ってると、いつか本当に掻っ攫われるからな』
何が掻っ攫われるだ。
あいつは部下だ。俺にとって自慢の部下だ。
笠原がこれから先、誰と結ばれようと、変わらずに俺の背中を追いかけてくれるのなら、人生を誰と歩もうとあいつの勝手だ。
あのまっすぐな瞳のまま、ずっと部下として俺の傍にあり続けてくれるのなら。
俺自身は生涯独り身だって構わない。
何をばかな事を考えてる。俺の人生にあいつが関係してたまるか。
堂上は横たえていた身体を起こし、頭を強く振った。
俺は、たぶん酔ってる。
二次会では腹立ち紛れに周りに煽られるまま、酒を何杯もがぶ飲みした。そいつが今頃になってまわってきている。
そう自分に言い聞かせ、飲みほした程度の量など堂上にとって酔うなど遥かに及ばないものだという事実は意識的に無視をした。
「寝るぞ、俺は」
誰もいない堂上の自室で、一人やけ気味でつぶやいた。
これ以上起きていたら、何を考え出すか分らない。このまま取り返しのつかない、とんでもない事まで認めてしまいそうだった。
明日が夜勤だろうが構うか。朝、早めに起きて昼過ぎにでもまた眠ればいいし、それが不可能ならば一日徹夜になるだけだ。たかが一日の徹夜、どうにでもなる。
くそっ。
短く舌打ちと共に独つくと、机に置いたビール缶に手をのばした。
これを一気に飲み干し、今日の日はさようなら、だ。
くだらない事を考えたがっている俺の脳みそも、明日になればいつもに戻る。
勢いで残ったビールをあおったのと同時であった。
トントンッ
軽快なリズムのノックがドアから響く。
この時間、このノックのリズム、相手は小牧だ。小牧以外にはいない。
一瞬、寝たふりを決め込むか、とささやきが堂上を誘う。
しかし、それは即座にあり得ないだろう、と同じ声が諌めてきた。
もしもそんな無謀をしようものなら、明日の夜勤中、小牧の無言の質問攻めにあうのは目に見えている。
まぁ、あいつと朝まで飲むのも悪くはないな。
それならばビールが足りない。小牧も付き合わせて共有ロビーで買い足すか。
財布を手にし、向う側で小牧が待っているであろう自室のドアを開いた。